ナンパの難易度を下げてしまう道具 〜ギラつきと準即の位置づけ〜

その日、僕は家族で田舎の祖母の家を訪れていた。ひとつは足の具合の悪い祖父の経過を伺うため。もうひとつは先日ナンパした女性とのアポのため。
 
 
 
彼女とは先日、京都で出会った。24歳看護師。彼女は旅行で京都に来ていた。そこで僕に声を掛けられた。田舎育ちの彼女はナンパなどされたことはなかった。彼女の出身と僕の祖父の家が近い事を知る。「今度ゆっくり会おうよ」なんの躊躇いもなく連絡先を教えてくれた。でも実際に会うことになるとは思っていなかった。今回、ひょんな事から家族で田舎に行くことになる。ダメ元で彼女に連絡してみた。答えはokだった。家族との食事を断り、僕は父の車を借りて彼女の元へ向かった。
 
 
 
 
 

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18:00待ち合わせ場所で彼女を拾う。「あれ、この間と雰囲気違う。違う人かと思った。いや、良い意味だよ」僕がアポの際よく使うオープナー。「ほんと?変わってないんだけどな。喜んで良いのかな」車を発進させる。車でのアポの場合、お酒は使えない。雰囲気で勝負するしかない。最初の店は彼女に案内してもらう。いわゆる名物料理を食した。非常に美味しかった。彼女を口説く事など忘れるくらいに。2時間くらいして店を後にする。21:00頃、落ち着いた雰囲気のカフェに入る。ここからが勝負だった。トーク内容を恋愛にシフトさせる。「看護師さんて男の扱い上手そうだよね。○○ちゃん特に上手そうな顔してる」ネグを挟みながら彼女の恋愛遍歴を引き出す。看護師は肉食なイメージがあったが、どうやら彼女はそれには当てはまらないようだ。都会と田舎の違いか。それともただ隠しているのか。ただ、出会いが圧倒的に少ないのは間違いないようだった。僕は徐々にボディタッチを増やす。若干の抵抗がある。しかし食いつきは悪くない。どうしてだ。彼女は時折、周囲を気にするような素振りを見せていた。そこで僕はひとつ仮説を立てた。田舎の人々は都会の人々よりも、圧倒的に小さな世界の中でで生活している。その分知り合いに遭遇する確率も格段に上がる。彼女はそれを恐れたのではないだろうか。それを確かめるため、僕は店を出ようと彼女に伝えた。車に乗り込む。運転しながら僕は言った「手が寒い。ちょっと手貸して」ハンドルを片手に、彼女の右手を握る。案の定、彼女は握り返してきた。やはり。僕は仮説を確信に変えた。赤信号、彼女の頬に触れ僕は言った「何かついてるよ。ちょっと見せて」彼女の顔に近づき、優しくキスをした。信号が変わる。何事もなかったように運転を再開する。「疲れたからさ、ちょっと休憩しよう」ホテルの駐車場に入る。居酒屋の暖簾をくぐるくらい、簡単に入ることができた。都会であれば、ホテルグダが発生する事は多い。それが本気のグダでも形式グダでも。いずれにせよ、僕たちはそれを解放する必要がある。彼女たちは自分を正当化できたとき、僕たちを受け入れる。それが車だとどうだ。ほとんどの場合グダは発生しないだろう。今回のように。車では既に"2人だけの空間"ができてしまっている。その"2人だけの空間"がホテルという場所に移っただけ。そういった意味では車は非常に便利だ。ホテルに行かずとも、キスもカーセッ⚪︎スもできてしまう。ある種のチートアイテムだと僕は思っている。同時に、ナンパ師としての実力を弱めてしまうものだと認識しなければならない。
 
 
 
 
 
ホテルの中、「少し横になるわ。寒いから一緒に布団暖めてよ」そう言って一緒にベッドに潜る。再び唇を重ねる。彼女の下半身に手を伸ばしたとき、彼女は最後の抵抗を見せた、「今日リーセなの」「気にしないよ」そう言って、僕たちは肌を重ねた。
 
 
 
 
 
 
 
行為後、僕はとてつもない空虚さに襲われた。準即を得るために犠牲にしたもの。お金。家族との時間。ナンパ師としてのプライド。こんなに満たされなかったセッ⚪︎スは初めてだった。このままナンパを続けると、僕はどうなってしまうのか。ナンパは心を蝕む。もう後戻りできなくなるような気がした。
 
 
 
 
 
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◾︎総評
 
ナンパを始めてから車でアポをするのは今回が初だった。あまりにも簡単過ぎた。居酒屋もカフェの和みも、普段と何ら変わらない。むしろそれは都会でも田舎でも同様に使えるものだった。もう車は使わない。武器を持って喧嘩はしない。道具に頼っていては何も得られない。これまで僕にナンパを教えてくれた人たちの事を考えると、とても後ろめたい気持ちになった。ただセッ⚪︎スをしたいのなら、それでも良いかもしれない。僕はなぜナンパをしているのか。それだけは決して見失ってはいけない。