東京遠征① 〜オンリーワン中毒の男〜
その日、僕は東京にいた。
会社の研修を終え、同僚が帰りの新幹線へ向かう中、僕はこの地に留まった。
以前から計画していた東京での完ソロ。
ついに実現する時がきた。
はやる気持ちを抑え、僕は足早に街へと向かった。
僕が選んだのは新宿。
金曜日の夜、果たしてここでスーツ姿のサラリーマンはウケるのだろうか。どんな女性がいるのだろうか。スカウトやキャッチに因縁をつけられないだろうか。
知らない街に若干の不安は感じつつも、僕は歩みを進めた。
新宿三丁目に到着する。
街は賑わっていた。
人の多さに驚く。
これならターゲットに困らないだろう。
それと同時に、人混みの中いたるところでスカウトが目を光らせているのに気づいた。
異様な光景だった。
この街はエネルギーに満ちていた。
連れ出せそうな場所をいくつかピックアップしておこう。
そう思った矢先、タートルレディ。
僕はすぐさま彼女に追いつき、声を掛けた。
「新宿にもお姉さんみたいな人いるんだね。」
えっ、と彼女が僕の顔を見た。
自分の姿を認識さえしてもらえれば、後はまくし立てればいい。
僕は続けた、
「俺今日出張で東京に来たんだ。新宿って怖いイメージあったからお姉さんみたいな人がいて安心したよ。お姉さん全身に良い人オーラ纏ってたから。」
「そんな事ないですよ。」
「じゃあ悪い人なの?もしそうなら俺人間不信になるわ。」
彼女が笑った。
黒のスーツにベージュのコートを着た25歳OL。黒髪セミロング、スト値は5。
「お姉さんこの辺詳しそうだね。少しだけでいいから案内してよ。」
「案内できるほど詳しくないよ。」
「じゃあ一緒に散策しようよ。一人だからどうせ友達いないんでしょ。」
「いや、いるし。まあ、少しだけなら。」
1人目から連れ出しに成功。
少し固そうな印象だったためバーを挟む事にした。
店に入りビールで乾杯。
スタンディングで横並びのカウンターで話す。
まだ警戒しているのか、2人の間にバッグと脱いだコートを置く彼女。
「いや、どんだけ俺の事嫌いなん!」
「そんなつもりじゃ」と彼女は笑っていたが、僕は明らかに彼女との間にある壁を感じた。
僕は探りを入れるネグを使う、
「嫌がってる割には知らない男に付いてくるんだね。いつもそうなの?」
「知らない人に付いてきたのは初めてよ。怪しそうな人じゃなかったから。でもまだちょっと怪しいかな。」
「どっちだよ。まあ、怪しい者同士仲良くなれそうやな。」
少しずつではあるが彼女が自分の事を話すようになった。
徐々に恋愛トークにシフトしていく。
何か違和感があった。
彼女も多くを語ろうとしない。
付き合った人数は1人。もしや。
彼女は処女だった。
ボディタッチにも激しい拒絶を見せていた。
僕の腕では彼女のグダを崩せる自信がなかった。
崩せたとしても長期戦になる。
僕は損切りの判断をした。
盛り上がったところで店を出る。
「今日は楽しかったよ。ありがとう。」
軽く彼女をハグし、僕はその場を立ち去ろうとした。
「ねえ、LINE教えて。」
「いいけど、次は口説いてもいいの?」
僕から連絡を取ることはないだろうが、LINEを交換し足早に次のターゲットを探しに出た。
1時間くらい声を掛けた。
ガンシカの割合が多かった。
途中、以前お世話になった某有名ナンパ師に遭遇した。
どうやら講習中のようだった。
簡単に紹介してもらい、少しだけ声掛けを見せてもらった。
とても楽しい時間だった。
東京は本当に面白い。
僕は大阪で成果を挙げられるようになったら、次はこの地で戦いたいと強く思った。
再度ターゲットを探す。
ガンシカが続く。
ドン・キホーテ前、マスクをした女性を発見。
早足で歩み寄り、声を掛けた。
「花粉症のお姉さん、何探してるの?」
「いや、ちょっと可愛いなと思って。」
彼女は店頭にあった動物の被り物を手に取って見ていた。
「いいじゃん。マスクよりその羊の方が似合うと思うよ。」
明るい感じの彼女はオープンした。
年齢は30くらい(最後まで教えてくれなかった。)黒髪でグレーのロングコート。いわゆる大人の女性といった感じ。
僕のイメージでは銀座などにいそうな女性だった。
反応は良かった。しかし、即系ではないだろう。でも僕は彼女に賭けてみた。
「もう少しお姉さんと話してみたいな。1杯だけ付き合ってよ。」
「可愛い事言うのね。でも私、君よりだいぶおばさんだと思うよ。」
「俺はタメだと思ってるよ。さあ、行こう。」
僕が歩みを進めると彼女は後ろから付いてきた。
1人目の女性を連れ出したバーに再度入店。
挨拶をした店員が、心なしか僕の顔を見て笑ったような気がした。
でもそんな事は関係ない。今日僕は彼女と即をする。ただそれだけに集中した。
乾杯をする。お互いにビールを飲みながら彼女のバックボーンを聞く。非常に頭の良い女性だった。時折見せる品のある振る舞い、言葉遣い、全てが彼女の育ちの良さを物語っていた。
商社勤め、語学堪能、留学経験。
僕が相手にした中で間違いなく一番のスト高だった。
会話が上手な彼女は完全にこの場の主導権を握っていた。ただ、IOIが無い訳ではない。少なからず、彼女は僕に興味がありこの場にいるのは間違いなかった。
流れを変えなくてはならない。
僕はビールを飲み干し、トーク内容を恋愛の話題にシフトした。
特に派手な恋愛遍歴ではなかった。しかし外国人や会社役員など、僕の知らない世界の人間と交際経験があるようたった。
僕は探りを入れる質問をぶつけてみた、
「⚪︎⚪︎ちゃんって年上からモテるタイプだよね。ていうか大人の男にしか興味なさそう。」
僕は年上相手によくこの質問をするが、僕にある程度興味がある女性は年下も好きとかしっかりしてれば年下でも良いといった返答をしてくる。
彼女は答えた、
「確かに年上が多いかも。でもね、年下が嫌って訳じゃないの。素敵な人もいると思うから。」
主導権が僕に移った瞬間だった。
「話してみて思ったんだけどさ、最初は堅い人なのかなって思ったけど、○○ちゃんは普通の女の子なんだね。ちょっと安心したよ。」
僕はできるだけ相手のスペックに怯まないよう余裕のある態度を貫いた。
僕は店を出ようと切り出すタイミングを伺っていた。先に口を開いたのは彼女だった。
「さっき言ってたサルサなんだけど、これから一緒に踊りに行ってみない?」
彼女との会話の中で、趣味のダンスの話をしている時が一番良い顔をしていると僕が言った事もあり、彼女は僕にもサルサを体験してほしいようだった。
セッ⚪︎スから遠ざかってしまうのではないかと少し考えたが、これから向かう場所がサルサのダンスを主とするクラブのような場所だという。
彼女のようは内面の美しい女性がたくさんいるのではないか。僕はそんな期待も少し抱き、彼女の提案を受け入れた。
23:45六本木
僕たちはクラブにたどり着いた。中に入ればもう終電はなくなる。
クラブは狭かった。平日はバー営業をやっているらしい。外国人客の多さと、男の年齢の高さばかり気になった。僕くらいの年齢の男は珍しく、きっと目立っていただろう。
海外のお酒のメニューが豊富だった。乾杯をし彼女と少し談笑をした後、僕たちはダンスフロアに移動した。
1時間くらい踊った。心から楽しい時間だった。自分の知らない世界を知っている彼女をとても魅力的に感じた。
素直にそう伝えた。もっと一緒にいたいと伝えた。もう言葉はいらなかった。
2:10中目黒 ホテル即
行為の後も僕は彼女を後ろから抱きしめ、彼女との会話を楽しんでいた。
「また会いたい。ずっとこうしていたい。」
彼女は真っ直ぐな目で僕に言った。僕も同じ気持ちだった。彼女と長期的な関係を築きたかった。
彼女を抱きしめたまま眠りにおちた。
翌朝、彼女を駅まで送った。
「楽しかった。次は大阪に遊びに行くね。」
彼女はそう言って改札へ向かった。エスカレーターに乗る前に再度僕の方を振り返り手を振る。僕も手を振り返す。彼女の姿が見えなくなるまでそこにいた。
少し時間が経ってから彼女にLINEを送る。
彼女から返信がある事はなかった。
即られたのは僕の方だった。
そんな事にも気付かない程、周りが見えていなかった。
東京遠征②へ続く。